Today’s China⑥:SNSでつかむ「映え」と「証明」が旅の動機

今や中国は、生活のすべてがスマートフォンで完結すると言っても過言ではない“スマホ社会”です。アリペイやWeChat Payといったモバイル決済は社会インフラとして浸透し、屋台の朝食からお年玉のやり取りまで、スマホひとつで済むのが当たり前。旅行情報の収集も例外ではなく、訪日旅行に関しても、計画から共有までSNSとアプリが主役です。

最近までは、「微博(Weibo)」「微信(WeChat)」、そして旅行に特化したアプリが主流となっていましたが、現在は「小紅書(RED)」一強だと言っても過言ではありません。
WeiboはTwitterのようなSNSで、保存・拡散のしやすさが特徴。WeChatはLINEに似た多機能アプリで個人の体験を共有し、グルメ・観光アカウントと連携することで一定的な発信力がありますが、多くの人は「小紅書」に集中しています。

小紅書は、InstagramとECを融合させたようなライフスタイル系プラットフォームで優れたアルゴリズムを持っているため、利用者がやめられないほどの関心を持ちそうな内容が優先的に表示される仕組みになっています。

利用者本人が旅行に行きたいと意識する前から、旅行の情報がちらほら入ってきたり、旅行をプランし始めるときの情報集めにもよく使われています。訪日中国人の中には「旅行前のリサーチはほぼREDだけで済ませた」という人も増えています。。

こうしたSNSを活用したマーケティングでカギを握るのが、「打卡(ダーカー)」と「顔値(イエンジー)」です。打卡とは、人気の観光地や商品を訪れ、「ここに来た」と証明するようにSNSで発信する文化。鎌倉や別府、地獄温泉など、“聖地巡礼”に適した場所は特に効果的です。

一方、顔値とは、見た目の美しさや映えを意味します。日本の地方や郊外の風景、ローカルグルメ、建築やカフェの内装などは、実は非常に“顔値が高い”と評価されています。SNSに投稿されやすくするには、この「映える」要素を意識した演出が欠かせません。
「自分が良いと思うものを紹介する」のではなく、「中国の若者が共有したくなる」視点で設計することが、共感・拡散・来訪につながります。

自治体や企業は、各SNSの特徴を踏まえたうえで、情報発信の内容やスタイルを調整する必要があります。
今や、SNSの中で“話題になる仕掛け”こそが、次のインバウンドを生み出す起点となっているのです。

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